昆虫腸内に生育する未知の不思議な菌類 | 卒業研究詳細ページ  

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卒業研究

大沢和広

2013年度卒業

指導教員:出川洋介

昆虫腸内に生育する未知の不思議な菌類

(1)ヒゲジロハサミムシの糞から発見した菌類の胞子形成構造、(2)胞子、(3)帽子状構造部分(TEM像)、(4)腸壁に張り付く様子(SEM像)

 カビやキノコなど菌類の仲間は、世界から約十万種が知られていますが、それはほんの一部に過ぎず、まだ十倍以上もの未知の菌が存在するはずだと考えられています。
 私は、卒業研究で、ヒゲジロハサミムシという昆虫の糞から新種の菌類を発見し、研究を始めました。
 この菌の胞子には、他には全く知られない帽子のような構造があります。これを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、驚くべきことに帽子状構造は吸盤のような仕組みになっており、胞子はこの部分でハサミムシの腸壁に張り付くことが分かりました。そして腸壁に固着して発芽した胞子は、新たに形の異なる巨大な胞子を作り、それが糞とともに体外に排出されると発芽して、糞の上に再び帽子状構造を持つ胞子を作りました。こうして、この胞子をハサミムシが食べることで再び腸内に戻るというこの菌の巧みな生活環の全貌が解明されました。更に分子系統解析の結果、糞上と腸内の両方で暮らすこの菌は、これまでに報告されてきた陸上で暮らす菌と昆虫の腸内で暮らす菌の中間に位置することが判明し、菌類の陸上進出という進化的イベントを読み解くヒントを与えてくれました。

 菌類の研究は、毎日が未知の発見の連続で、顕微鏡を覗くことが楽しくて仕方がありませんでした。ぜひ皆さんも大学で自分が没頭できるような研究課題を見つけて下さい。

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